みーちゃん物語
しーままが、昨年度末に控えた国家試験のため
半年間実家に戻り勉強していた頃のお話
2016年夏、茶白の野良猫が我が家の敷地内に迷い込んできました
貧相で荒んだ様子を気の毒に思った母が姿を見つけてはご飯をあげていました
非常に警戒心の強い猫で、うっかり頭を撫でようとした近所のおばさんが引っかかれて血だらけになったこともありました
その猫は少しずつ人間との距離を近づけていき
いつしか、猫は母から「みーちゃん」と呼ばれていました
秋、みーちゃんは庭のビニールハウスの一角に居を構えたようで
ほぼ毎日居着くようになりました
母もちゃんとしたキャットフードを買い、水と一緒に与え始めました
晩秋になり、外の空気が一気に冷え込んだ頃
みーちゃんと私達との距離もグッと縮まり
ハウスでお出迎えをしてくれるようになり
手から直接おやつを食べてくれるようになり
少しずつ身体に触れることを許してくれました
お腹いっぱいの毎日を過ごすようになってから
荒んで目もしっかり開いていなかったような頃の面影はなくなり
キメの細かい綺麗な被毛と淡麗な表情の美しい雄猫になっていたみーちゃん
いつしか、冬が訪れ
みーちゃんはグルーミングをさせてくれるまで私達に心を許してくれました
真冬には、ビニールハウスで過ごすみーちゃんのために
ベッドの中に毎晩、使い捨てのカイロや湯たんぽを置いてあげました
毎年、冬のビニールハウスは木枯らしで寂しい空間だったけど
そこにみーちゃんがいるだけでとても温かい幸せな空間になっていました
2月末から3月初旬にかけて野良猫達は恋の季節を迎え
それは雄猫にとって常に緊張感のある雌をめぐる闘いの日々でもありました
みーちゃんは顔から全身にかけて傷だらけになって帰ってくることが多くなり
全身痛くて動けないのか、ぐったりし、ご飯すら食べられないこともありました
そんな時でも、私と母が様子を見に行くと安心したようにお腹を出して
撫でてとおねだりするみーちゃんが今でも瞼の裏に焼きついています
本当にこの短期間のうちに私達人間のことを深く信頼してくれ
その勇気と愛情深さに私と母はとても幸福な気持ちになりました
一緒に居て欲しい、というみーちゃんの気持ちが伝わってきて
真冬のビニールハウスの中で何時間もの間一緒に過ごしたこともありました
そしてどんなに食欲のない時でも、
イナバのちゅ〜るだけは美味しそうに食べていました
3月中旬、闘いの日々にも夜明けが来て
喧嘩でお顔がすっかり腫れて目も開かなくなってしまったみーちゃんが
小さな可愛らしい雌猫をビニールハウスに連れてきました
私は「ちっちゃい」その猫に「ちっち」と名付けました
野良猫のオスとメスは発情期の交尾をする時だけの関係性だと思っていた私達にとって
みーちゃんとちっちの関係は晴天の霹靂でした
発情期を過ぎた後も二人は常に一緒にいて
身を寄せ合う2匹の間にはとても温かい時間が流れていました
驚くべきは、ちっちがとても人間のことが好きな猫だったということでした
近くの農家で餌をもらっている猫だったのかもしれません
みーちゃんだからこそ、ちっちをパートナーに選び
私達との間に築いてきた家族愛を
この、ちっちと一緒に築いていこうと思ったのでしょうか
その2匹の光景は、とても美しいものでした
その後、4月中旬に差し掛かった頃
みーちゃんが日に日に痩せていき
ある日を境に餌を食べられなくなりました
ずっと野良で過ごしてきたみーちゃんを、体調の悪い時に突然動物病院に連れて行って怖い思いをさせることが良いことだとは私達には思えず、自然に任せて様子を見ることにしました
餌を食べられなくなって3日目
2017年4月17日
みーちゃんはいつも寝ていたビニールハウスの一角で虹の橋を渡ったのでした
発情期に他の猫と喧嘩した際に悪い感染症をもらってきて、それが急激にみーちゃんの身体を蝕んだのだと思われました
餌を食べられなくなってしまったみーちゃんでしたが、亡くなる直前まで、イナバのちゅ〜るだけは口にすることができました
人間に関わるようになって、少しでもみーちゃんが幸せを感じてくれていたら、それだけで私達は幸せです
それに、みーちゃんは生前より日々の行動で私達に自らの幸せを伝えてくれていたように思います
私にとってみーちゃんは国家試験勉強中の大切な癒しの存在でした
毎日朝と晩にみーちゃんに餌をやりに行くのが私と母の楽しみでした
みーちゃん、無事国家試験受かったよ!!
みーちゃん、本当に愛らしい素晴らしい猫でした
愛をいっぱいありがとう
みーちゃんにもらったいっぱいの愛を、たくさんの猫や命に返していきます